季節の管理<夏>
真夏はひたすら我慢が必要です。人が夏ばてするように、ベゴニアも夏は消耗し、花もなくなってしまうものがほとんどです。夏ばての症状としては、葉が落ちる、花が落ちると言う軽度のものから、根が腐る、茎が腐ると言う重症まであり、重症になってしまう原因は、水遣りの失敗によるものがほとんどです。
しかし、四季咲き性のものは秋に再び花を咲かせてくれるので、それまで元気に管理する必要がありますし、期咲のものも、この時期の管理次第で来年の花を左右すると言っても過言ではないのです。正直な話皆さん一人一人の栽培環境は千差万別で、一概にこうということはなかなか言えないのですが、多少のヒントになれば幸いです。
ポイントその1<周りを涼しくしよう>
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夏越しで重要なことは、まず第一にとにかく周りを涼しくすること。しかしこれは非常に難しいですね。たとえばヨシズを掛けて直射日光をさえぎる、家の北側の風通しの良いところに置く、コンクリートの上の場合はすのこを敷いて輻射をさえぎる、打ち水をする等など。 目標とする気温は昼28℃、夜20℃ですがこれはちょっと平地の屋外では難しいでしょうが、出来る限りの事はしてみましょう。
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北側に地面より高く置き、輻射をさえぎる工夫をしている |
根茎性やレックスなどの根茎を持つベゴニアは、木立性のものに比べて空中湿度を要求します。葉を鑑賞するタイプのものが多いので、葉をきれいな状態に保つためには60%以上90%以下の湿度が必要です。ですから、乾燥の激しい、一日の湿度変化の大きいところより、木の下の日陰など、変化の少ない所の方が向いています。
根茎性のものは、元々がジャングルの下草ですから、強い光線は必要としません。1〜2万ルクス(直射日光が10〜15万ルクス・遮光率60〜80%)あれば十分ですし、それ以下でも徒長はしますが真っ暗でない限りそう簡単に枯れません。
ポイントその2<鉢の中の温度を低く保つ>
二番目には鉢の中の温度を低く保つと言うこと。これは二重鉢にする、素焼き鉢を使うことである程度はカバーできます。水をやれば温度が低くなると思ってはいけません。鉢の中がいつでもびしょびしょしていると水はじわじわと熱を吸収し、気温よりも温度が高くなってしまっていることもありますから気をつけましょう。
ポイントその3<上手な水遣り方法と根の状態>
それでは3番目に上手な水遣りとは? 日が高くなって気温が上がってくると植物は萎れてきます。でもこの時ちょっと注意してみてください。鉢土は乾いていますか?それとも湿っていますか?もし乾いていたら、この時点では鉢を日陰においてちょっぴり水をあげて、夕方になったらたんとあげましょう。
では湿っていたら? まず鉢から抜いて見ましょう。鉢の中に土がごっそり残ってしまって、根なんかほとんどないなんていうのは問題外で、直ちに挿し木をするなどの処置が必要ですが、とにかく根鉢を見て下さい。根は元気ですか?元気な根は白〜ベージュ〜ピンクと言った色をしていますが、痛んだ根は茶色〜黒をしています。
根が元気ならば、多少萎れても夕方になれば元に戻りますから、慌てて水をやる必要はありません。あわてる何とかは貰いが少ないと言いますが、下手にあわてて真昼に水をやると、逆に根が煮えてしまってひどいダメージを与えることになります。水遣りの基本は鉢の中が乾いてから、です。
でも、もし根ぐされを起こしていたら...
木立性ベゴニアの対処方法 |
一番のお勧めは早い時期に挿し木をして株を更新することです。この時期でしたら、室内の日陰でコップの水に枝を挿しておけば、一週間くらいで発根してきますから、根が2〜3センチになったところで鉢上げします。しかし、せっかく大きくしたものなので、切るのが惜しいと言う方もいるでしょうが、腐った根の中にはセンチュウや、バクテリアが入り込みやすくなっていて、ぐずぐずしているとあっという間に株全体が腐ってしまったりするので、出来るだけ早めの処置が必要です。 |
根茎性・レックスベゴニアの対処方法 |
レックス根茎の場合はまず黒くなった根をすべて落とします。根茎が腐っていたらその部分も切り落とします。その上で、バーミキュライトなどの人工用土、もしくは殺菌済みの、挿し木用の土に挿し木をするつもりで植え付けます。根がありませんからその分葉も落として、3〜4枚くらい残すようにします。このとき用土は軽く湿っている程度にします。
葉が萎れてきたら霧を吹いてやる程度にして、根が出てくるまでおよそ2〜4週間は、慎重に管理します。根が出てきても、涼しくなるまではそのまま管理します。落とした葉は、葉挿しが出来ます。清潔なバーミキュライとに葉柄を1センチくらいつけて挿して、なるたけ涼しいところに置きます。腐らせないように管理すると、1〜2ヶ月で芽が出てきます。 |
「よく、水はいつやればよいのですか?」と聞かれますが、植物が最も水を吸う時間帯は昼間ですから、朝行うのが基本です。夕方は萎れていない限りは水やりの必要はありません。特に熱帯夜が続くような日には、夕方の水やりは控えた方が無難です。あと、葉水をすると良いと言われますが、これはあくまで霧吹きで行うのが基本です。ホースでなんていうのは、水をやってるのと同じことになってしまいますから、注意が必要です。
ポイントその4<肥料>
さて4番目に、肥料の話しをしましょう。(とはいっても、この時期に良い環境を整えられるのは、高冷地とか冷房のある温室に限られてしまうでしょうが)もし、この時期に元気に花を咲かせているものがあるのなら、肥料は必要です。ただ、いつものつもりで肥料を与えると、根が痛む可能性があるので、通常使う2〜3倍に薄めて与えます。花がなくても根が元気ならば同じように与えても良いでしょう。元気のないものについては問題外。絶対に与えてはいけません。
環境は最悪!と言う方は秋の彼岸過ぎて、最低気温が20℃以下になるようになるまで、絶対に肥料を与えてはいけません。(人間でも弱った胃袋にステーキは毒ですよね)。
ポイントその5<病気・害虫対策>
最後に病気と害虫について。この時期にもっとも問題となる病気はうどん粉病でしょう。葉の上にうどん粉をまぶしたようなカビの生える病気で、ひどくなると葉がばらばらと落ちてしまいます。最近、無農薬栽培とか言って、重曹がいいとか、洗剤がいいとかと良く耳にしますが、効き目は短く、しかも大発生してからではほとんど効き目はありません。現在は非常に良い薬もホームセンターで買えるようになりましたので、月に1度散布しておけば安心です。ベルクート水和剤、サンヨール乳剤等をお勧めします。
この季節、虫たちも活発に活動しますが、一番厄介なのがホコリダニ等のダニ類でしょう。成長点に寄生して、新芽を食ってしまったり、葉を傷だらけにしてしまいます。ダニにはダニ専用の薬でないと効きません。お勧めはバロックです。アブラムシや芋虫類にはモスピラン水溶剤か粒剤が良いでしょう。昔からある薬より最近のものの方が安全性も高いし、薬害も少ないし、効き目も良いので、プロは常に最新の薬を使っています。
※薬の散布は 夕方か、曇った日に行って下さい薬を散布した後に日に当たると葉焼けをおこす恐れがあります。殺虫剤、殺菌剤混ぜて散布しても構いません。展着剤を加えた方が薬の効果が持続します。それから 同じ薬をずーと 使うのではなく、しばらく使ったら配合を替えてください。理由は 菌や虫が薬に慣れてしまう恐れがあるからです。
大切なベゴニアを虫や、うどんこ病から守りましょう
協力:山口裕美子さん |